150分の1の世界(Nゲージ)にこだわる理由・続き
スケールの違いは遊び方にも直結します。実寸で20メートルの車両が10両並べば、HOゲージでは約2.5メートルになります。確かに迫力はありますが、一般家庭でのびのび走らせるのは難しいでしょう。一方、Nゲージなら同じ編成でもおよそ1.3メートルに収まり、リビングのテーブルにだってホームに停車する姿を再現することができます。自分の生活空間に鉄道の情景を呼び込めることは、Nゲージならではの大きな魅力です。
また、縮尺が小さいからこそ楽しめるのが車両工作です。大きなスケールなら細部までリアルに表現されるのは当たり前ですが、Nゲージの小さな車両をよりリアルに見せるためには、自分の手でひと工夫を加える必要があります。たとえば手すりやジャンパ栓といった微細パーツを取り付けたり、塗装を変更して市販されていない塗装車両に仕立てたり、時には車両の改造に挑戦することもあります。小さな車体にピンセットで部品を組み込んでいく作業は根気がいりますが、その分「自分だけの一両」が完成したときの喜びはひとしおです。気づけば小さな車両の細部の仕上がりに夢中になり、時間を忘れて没頭してしまうのです。
さらに、Nゲージには「かわいらしさ」があります。ケースから出して並べたときの愛らしさは、その小ささに似合わぬリアルな存在感だけでは語り尽くせません。まるで宝物を大切に扱っているような気持ちになります。走らせるときの楽しさはもちろんですが、ただ見ているだけでも心が和む「かわいらしさ」なのです。
こうして考えると、150分の1という世界にこだわる理由は明らかです。最初の出会いが小学生の私にとって自然で必然だったこと。そしてその小ささが、手に入れやすさ、遊びやすさ、作り込みの楽しさや「かわいらしい」という感情まで、すべてを支えてくれています。だからこそ、私はこれからも150分の1の世界にこだわり続けたいのです。