150分の1の世界(Nゲージ)にこだわる理由

鉄道模型の世界にはいくつもの縮尺があります。その中でも代表的なものが、NゲージHOゲージと呼ばれる二つの規格です。Nゲージは実物の150分の1、HOゲージは80分の1の縮尺で作られています。同じ電車でもスケールが違えば雰囲気も大きく変わり、遊び方や楽しみ方もそれぞれに特徴があるのです。

私が初めて出会ったのはNゲージでした。小学生のころ、初めて自分のおこづかいで買った鉄道模型がNゲージだったのです。手のひらにのる小さな汽車――子どものころの私は「電車」ではなくそう呼んでいました――が動き出した瞬間、「これは自分だけの汽車だ」と胸が高鳴りました。Nゲージは、鉄道模型の世界に入るための入り口として、とても自然な存在でした。

Nゲージには、ほかの縮尺にはない魅力がありました。当時から既製品のラインナップが圧倒的に豊富で、好きな形式の車両を探すのに困ることがありませんでした。カタログをめくるたびに、新しい仲間を迎え入れたくなる。そんなワクワク感を、Nゲージはいつも与えてくれたのです。

価格面でもNゲージは、子どもが背伸びをすれば買うことができる存在でした。HOゲージに比べるとずっとリーズナブルで、小学生のおこづかいでもなんとか手が届いたのです。もし最初にHOゲージに出会っていたら、「欲しいけれど高すぎる」とあきらめていたかもしれません。現実的に手に入れられるNゲージだからこそ、夢中になれたのです。(続く)