実物を見てもらうことの喜び
バスコレジオラマを、仕事関係の方に見ていただいたことがあります。それまで私は、自分の作った作品をネット上で公開することはあっても、実物を家族以外に見せたことは一度もありませんでした。「ネットで見てもらうのと実物を見てもらうのは同じようなものだし、わざわざ作業場のようなところに人を招いてまで見せる必要はないのでは」と思っていたからです。さらに、自分の趣味をあまり公にしてこなかったことや、自分自身が他人を自分の居住空間に招き入れるのが苦手であることも、大きな理由でした。
ところがある日、同僚から「ぜひ実物を見せてほしい」と強くお願いされたのです。そこで思い切って、その同僚を含むほんの数人―たまたまその話題に居合わせた方々限定という形で、お招きしてみました。正直に言えば、それはもう、とても恥ずかしい気持ちでした。自分の作った実物を公開するというのは、まるで自分の内面や弱みをさらけ出すような感覚だったからです。
けれど、来てくださった方々は、それはそれは長い時間、食い入るようにジオラマを見つめてくださいました。次々に質問をしてくださり、たくさんの誉め言葉もいただきました。そのとき初めて知ったのです。“ネットに一方的に公開して反応をもらう”のと、“目の前で実物を見てもらう”のとでは、こんなにも反応が違い、そしてこんなにも嬉しいものなのだということを。帰り際には、皆さんが口を揃えて「次の公開はいつですか」と言ってくださいました。その瞬間、実物をみてもらって良かった、この趣味を続けてきて本当に良かった、と心から思いました。
もちろん、実物を人に見せるというのは大変です。ネットで公開するなら、都合の悪い部分は写さなければいいのですが、実物を見てもらうとなれば全方向から見られます。つまり、どこも手を抜けないのです。そのため、ネット公開用としてジオラマが完成した後、人を招くための準備にはさらに約3か月を費やしました。その苦労も含めて、ようやくたどり着いた公開日は、私にとってかけがえのない体験でした。
いまは次の公開に向けて、鉄道模型の世界を制作すべく、鋭意試行錯誤を重ねています。見てくださる方に喜んでもらえるような作品に仕上げたい―そう願いながら、今日も小さな机の上でコツコツと作業を続けています。
あの日の感激をそっと胸にしまいながら、また誰かの心に静かに響くような『150分の1の世界』をつくりたいと思っています。